02 街を学ぶ・街で学ぶ


福岡市における都心再開発の核である天神エリア、博多駅エリアに次ぐ拠点 が渡辺通エリアです。渡辺通エリアでは、〝対話〟から始まるソフト面や生活 者視点も重視した〝新たなまちづくり〟が、いま始まっています。

渡辺通エリアにおけるまちづくりの将来像を考えていく『わたなべ―ス実行委員 会』は2024年10月4日、esports Challenger’s Park(旧ロフトビル8 階)にて「街を学ぶ・街で学ぶ」をテーマとした渡辺通座談会『わたなベース』を開催しました。第2回目となる今回の座談会のキーワードは、「越境学習の機会創出の場づくりからはじめるイノベーション」でした。越境学習を切り口にして、〝街での学びが継続される空間と仕組みづくり〟について語り合いました。

当日、約80人が参加した座談会では、福岡テンジン大学の岩永真一学長が、スペ シャルゲストとして登壇しました。そして、「〝まち〟全体がキャンパスとなり、学 びの場となる」「〝まち〟の誰もが生徒になることができ、誰もが先生にもなること ができる」とするテンジン大学における、人と人が学び合い・つながっていくコミュニケーションを学ぶ貴重な機会となりました。

引き続いてのパネリストによるディスカッションでは、各自が自己紹介を交えな がら、今回のキーワードである〝越境学習〟や〝越境〟に関連した活動や取り組み 事例について、語り合いました。そして、〝街を学ぶ・街で学ぶ〟ことの意義や重 要性についても熱心な討論を繰り広げました。

その後、登壇者や来場者らのネットワーキングの時間も設けられており、〝街を 学ぶ・街で学ぶ〟ことの意味や越境学習に関する感想を述べ合う姿が見られました。


渡辺通座談会『わたなベース』登壇者発言要旨

渡辺通座談会『わたなべ―ス』~街を学ぶ・街で学ぶ~では、スペシャルゲ ストをはじめ、各界で活躍されている方々が登壇されて、熱心なディスカッシ ョンが繰り広げられました。

第2 回目となる渡辺通座談会において、登場された方々によるやりとりや発 言内容を整理・編集した要旨をメッセージとして掲載しております。

SpecialGuest

福岡テンジン大学 学長

岩永 真一 氏

テンジン大学は街に育ててもらったことへの恩返しでもある

福岡市で生まれ育った私は、これまで一度も住民票を福岡市外へ移したことがない。福岡市は全国的にも流動性の高い都市であり、福岡市に住んで10 年以上の人は、福岡市民の半分もいないと言われている。

大学在学中に街のゴミ拾いボランティア団体であるグリーンバードに参加し、その縁で2006 年に発足したWeLove 天神協議会の立ち上げにも加わった。

学生時代は就職氷河期であり、内定がもらえずフリーターとして社会に出た。その後5 年間会社員を務めた後に独立している。独立した翌年、福岡市の協働提案事業に応募して福岡テンジン大学を設立した。現在、テンジン大学学長として、いろいろ掛け持ちしており、肩書きだけでも10 個を下らず、「複業家」と名乗っている。

テンジン大学は街に関わるきっかけを提供しており、街中に居場所を設け、学びや仕事を生み出している。私自身、「街に育ててもらった」との思いが強く、テンジン大学自体が、「街への恩返しだ」と思っている。

対話と学びがあるテンジン大学では、多様性を生み出しており、『越境学習』を実践していると言える。テンジン大学は年代を超えて街中で誰かと出会えるプラットフォームであり、地域に根差したシビックプライドも築いていると考える。

世の中には、開かれた人的ネットワークを持つ人と、閉ざした人的ネットワークを持つ人の2 タイプがいる。前者はポジティブにつながっていくこと自体に価値を 見出し、仕事にもなっていく。一方、後者は人間関係面や街にも閉ざしている。

開かれた人的ネットワークを持つ人が多いほど、街の情報は正しく伝わり、まちづくりも活発化していくので、重要な要素だと考える。この点、テンジン大学には、開かれた人的ネットワークを持つ人が多く集まって来る。開かれたネットワークが 重要であり、誰かとコミュニケーションを取ることが、その第一歩となる。

SpecialGuest

KAMIKIKAKU CREATIVE PRODUCE 代表
一般社団法人ソーシャルグリーンデザイン協会理事

神木 直哉 氏

花と緑の世界では「関わる」という概念で越境できる

20年以上にわたって、都市の中で花と緑を作る仕事をして感じていることがある。

業界では今、花と緑を作ること自体が目的化しており、作ったら引き渡して終わりという感がある。このため、私自身「関わる」という概念を持つべきだと考えている。「関わる」ことで循環する魅力的な仕事に変わっていく起点になればと思う。

全国約300校ある農業や園芸高校の次世代は、この魅力ない業界へ就職しない傾向があるため、これまでの業界のフェスイベントではなく、福岡の中心に越境して、福岡県下の農業・園芸系の高校三校の生徒約50人が花と緑を使って作品を作る姿を保護者や来場者の方々に越境して見ていただくフェスにした。そうしたところ生徒の作品を見にきた一般来場者に、自分たちの活動を発信したことも越境学習の要素になったと思う。まさにこれが「関わる」ことの魅力ある花みどりの活動である。

街の中で学べる仕事として花と緑はわかりやすいが、反面生き物である植物をモノとして扱ってしまうと「引き渡し」した後は、花やみどりが枯れまくる風景を量産する可能性があることを、政策的にも行政は花みどりに関わり続けるようにしていく必要があると考える。 

SpecialGuest

MINGLE design lab代表
福岡地域戦略推進協議会ディレクター

片田江 由佳 氏

企業が市民らとの共創プロジェクトで越境する

まちづくりのコーディネーターとして、自治体や企業の連携、特に市民がまちづくりに関わっていくための場づくりに携わっている。

越境および越境学習に関しては、私がディレクターを務める福岡地域戦略推進協議会(FDC)がある。FDCには、約240の企業や行政、大学が参画しており、福岡の成長に向けてリソースを出し合い、地域一体となって様々なプロジェクトに取り組んでいる。それぞれが自社・自団体の活動領域を超える、まさに越境を支えるプラットフォームであると考える。

渡辺通エリアは、例えば天神などのエリアと比して居住者も多い地区であり、いわゆるリビングラボと言われるような住民市民と企業らが共創するプロジェクトを立ち上げていくことができると思う。まちづくりへの市民の関わりしろをいかにつくるか。市民がまちにインパクトを与えるような経験をできるまちづくりを目指すべきだと考える。 

SpecialGuest

地域環境リノベーション計画代表
九州大学大学院客員教授

松口 龍 氏

多彩で異能な交流が越境であり、想定外のアウトプットを導く

民間企業や地主らとの土地区画整理事業を手掛ける一方、九大箱崎跡地などのサポートという2つの仕事をしている。私自身としては、これまでやってきたこと自体が越境だと考える。

最初、建設会社に入社して設計を担当していた。その後、系列の出版社へ出向し、編集の仕事に就いた。設計は担当者として与えられた案件をこなす仕事だったのに対し、出版社の編集部は情報の交流サロンであり、異能な人々と出会いながら、街中へ飛び出して雑誌を作っていた。

その後、東京と作法の異なる九州へ転勤という名の越境をして独立した。博多駅前の事務所はワークスペースであり、サロンとしての機能も果たしている。かつてはお酒も交えながら、多彩で異能な人々とのディープな交流をしており、集う場があると越境は起きると思う。

まちにいろいろ仕掛けることが大事であり、渡辺通エリアでも想定外の出来事やアウトプットが起きるプロセスに関わっていきたいと考える。

SpecialGuest

九州大学大学院教授

黒瀬 武史 氏

〝街を学ぶ・街で学ぶ『みんなのキャンパス構想』の実現が重要

大学で都市計画や建築学を教える中、学生が街へ飛び出して地域の人たちと交流しながら、まちに学ぶことの重要性を実感している。

まちづくりは多面的で多様であり、学生がまちで学ぶことには、大きな意味がある。大学の枠を超えて地域や社会とともに学んで学生が成長していくことは、大学にとって非常に大切な越境学習の機会だと考える。大げさなことや大胆なことをやるのではなく、まずは自分自身で面白がれることから始める大切さを私自身も気づかされた。

今日、人と人とがつながり、多面的にフォーカスしていくことで価値が生まれる。そのためにもフラットな関係性を持ちながら、自らの企画を自由に語り合える場があることは、まちづくりにおいても貴重であり、いろいろモノゴトが芽生える可能性を秘めている。

そういう仕組みやプログラムづくりを通じて、まちは自然と豊かになっていく。そして、渡辺通においても『みんなのキャンパス構想』を実現していくことが重要だと考える。

SpecialGuest

aptp 代表
明治大学アジア建築都市研究所客員研究員

滝口 聡司 氏

〝街を学ぶ・街で学ぶ〟が渡辺通エリアの魅力と価値を高める

街での学びは貴重であり、街に学べる機能や学ぶ機会を設けることは大切だ。それは、今回のキーワードである「越境学習」にもつながっていくものと考える。

街が学びの場になっている事実を街行く人たちの目に止まることが重要であり、学ぶ姿を街の風景にしていきたいと思う。この風景とは人々の営みであり、多様な人々による多彩な学びがあることは、街 の魅力になる。そのためにも〝街を学ぶ・街で学ぶ〟という仕組みづくりが重要であり、その点で福岡テンジン大学の取り組みは参考になった。

〝街を学ぶ・街で学ぶ〟上での仕組みづくりについて、座談会でも今後、ブレイクダウンした実験やフィードバックになる実証イベントに挑戦していくこと自体も実践的な学びになり得るだろう。

渡辺通エリアに学びの機会と機能を設けていくことは、キャンパス構想の実現につながり、街の魅力や価値を高めていく取り組みだと考える。

RECENT POST

  • お知らせ

    あかり咲くランタンナイト

    2026.03.04

  • お知らせ

    渡辺通座談会「わたなベース」Vol.03

    2026.03.04

  • お知らせ

    渡辺通座談会「わたなベース」Vol.02

    2024.09.15

  • 座談会 わたなベース

    01 都市をリノベーション

    2024.07.25

  • お知らせ

    渡辺通座談会「わたなベース」Vol.01

    2024.06.01

  • 渡辺通Note(紙媒体)

    vol.01 2023.SEP

    2023.10.01